おじぃの眼鏡、おばぁの杖

トイプードルのチィちゃんがやってきた。
おじぃ(父76歳)、おばぁ(母72歳)のために私が購入したものだ!
ちなみにチィちゃんの姉妹は私の妹が購入した。
やがてチィちゃんは成長し、おじぃが新聞を開くと眼鏡を咥えて持ってくるようになった。
散歩のときには、足の悪いおばぁのため杖を咥えて玄関でスタンバってる。
公園ではボール拾いが日課で、ボールを咥えて嬉しそうに走ってくるしぐさがとても可愛い。

そんな楽しい日々を過ごしていた9年目の冬のことだった。
チィちゃんが、眼鏡を咥えおばぁの所に来て、激しく吠えていた。
これはなにかあったのだと思い、チィちゃんの後をついて行くと、おじぃが倒れていた。
脳溢血だった。(享年85歳)
それから5年後おばぁも病気で亡くなった。
チィちゃんも老犬になっていたが、夫と私と子供達に可愛がられて元気を取り戻していった。
おじぃとおばぁは亡くなったがそれでも、夫が新聞を開くと眼鏡を咥えて持ってくる。
もんろん散歩のときは杖を玄関に持ってきて、ボールを咥えてる。
おじぃとおばぁのことをチィちゃんは忘れられないようです。

おばぁの命日の前日の朝のことだった。
チィちゃんは足腰もあまりよくなく、散歩はいけなかったのでサークルから出して自由にさせていた。
部屋に行くとそこにはチィちゃんの姿がなかった。
すると玄関でチィちゃんは、ボールを咥えたまま冷たくなっていた。
そばには杖・・・・・。
私は思った。
おじぃとおばぁと天国に散歩にいったんだと。

話はこれだけでは終わりません。
不意に携帯が鳴った。
私の妹からの電話だった。
泣き声であまり言葉が聴きとれなかったが、察知した。
妹に、「マロン(チィの姉妹)が亡くなったの?」と聞いた。
やはりそうだった。
姉妹が同じ日に亡くなったのです。
私は運命を感じた。
私は今はチィちゃんの姪にあたる子と暮らしている。
命は新しい命へとつながっていく。
人間と犬は、助け合い、思い合い生きている。
寿命は違うけど、生きている間に詰め込む幸せの量は変わらない。
だから私はこの先も犬と生きていく。


〜お便りより〜